公正証書遺言の費用を総まとめ!弁護士、司法書士、行政書士の費用

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2019年1月7日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
公正証書遺言の費用
公正証書遺言の費用を総まとめ!弁護士、司法書士、行政書士の費用

公正証書遺言を作成しようとしたときに、気になるのはその費用です。

この記事では、公正証書遺言にかかる費用を詳しくわかりやすく説明します。是非、参考にしてください。

公正証書遺言とは?

遺言とは、亡くなった人が、主に自分の財産等について残した意思表示のことです。例えば、「全財産を妻に相続させる」というような意思表示のことです。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらってする遺言のことです。

普通形式の遺言には、公正証書遺言のほかに、自筆証書遺言と秘密証書遺言があります。秘密証書遺言と自筆証書遺言、公正証書遺言の違いをまとめると、下表のようになります。

自筆証書遺言秘密証書遺言公正証書遺言
作成者自分(専門家に依頼することも可能)自分(専門家に依頼することも可能)公証人
作成方法自筆のみ(専門家に文章を作ってもらっても書くのは自分)自筆・代筆・ワープロ(署名は自筆のみ)公証人が作成
公証役場に行く必要なしありあり
証明できることなし遺言者の意思に基づいた遺言であること遺言者の意思に基づいた遺言であること、遺言内容
証人不要必要必要
秘密性作成したことすら誰にも知られずに可能内容は誰にも知られないが、作成したことは公証人と証人には知られる内容も含めて公証人と証人には知られる
費用不要1万1000円1万6000円〜(相続財産額による従量課金)
保管者自分(誰かに委託してもよい)自分(誰かに委託してもよい)公証役場
内容の一部変更できるできないできない
検認必要必要不要
法務局における遺言書の保管制度利用できる利用できない利用できない(利用する必要がない

 

公正証書遺言の費用

公正証書遺言の作成にかかる費用には、次の4つがあります。

  • 証明書交付手数料
  • 公証人手数料
  • 証人手数料
  • 専門家報酬

以下、それぞれについて説明します。

証明書交付手数料

公正証書遺言の作成には、主に次の書類が必要です。

  • 遺言者本人の本人確認資料(印鑑登録証明書に加え、運転免許証、住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ。)
  • 遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書、及び推定相続人の戸籍謄本(直系尊属が推定相続人の場合には、遺言者に子がいないことの分かる戸籍が必要となり、兄弟姉妹が推定相続人の場合には、遺言者に子がなく、かつ、直系尊属が死亡していることの分かる戸籍が必要となります。)
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書(法人登記簿謄本又は登記事項証明書))
  • 財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書(遺言書の中に個別の不動産を明記しない場合(例えば、「全ての不動産を妻に相続させる。」などとする場合)には、登記事項証明書の提出は不要となります。)
  • 証人予定者のお名前、住所、生年月日及び職業をメモしたもの

遺言作成に必要となる書類は遺言内容によって異なり、また、公証役場によっても若干運用が異なるため、事前に公証役場に確認すると良いでしょう。

以上のうち、証明書類については、下表の通りの交付手数料がかかります。

証明書の種類交付手数料交付期間
印鑑登録証明書1通300円 ※本人確認を他の証明書によってする場合は不要市区町村
戸籍謄本・戸籍全部事項証明書1通450円市区町村
住民票1通300円 ※相続人以外の受遺者ごとに必要 相続人以外の受遺者がいない場合は不要市区町村
登記簿謄本・登記事項証明書書面請求:1通600円
オンライン請求・送付:1通500円
オンライン請求・窓口交付:1通480円
※遺言書に明記される不動産ごと及び受遺者となる法人ごとに必要 財産に不動産を含まず、受遺者に法人がいない場合は不要
法務局
固定資産評価証明書1通350円〜400円(市区町村ごとに異なる) ※財産に不動産を含まない場合又は固定資産税課税明細書がある場合は不要市区町村

公証人手数料

公正証書遺言を作成する際に公証人に支払う手数料は、遺言書に記載する相続財産(遺産)の額によって決まり、その金額は、公証人手数料令という法令によって下記のとおり定められています(この手数料は全国の公証役場で共通です)。

この場合の、相続財産の金額については、遺産の総額ではなく、相続人毎に計算します。

例えば、1億6,000万円の遺産を、妻に1億円、長男に4,000万円、次男に2,000万円相続させる遺言の場合、

  • 妻 :相続財産1億円     → 手数料 43,000円
  • 長男:相続財産4,000万円 → 手数料 29,000円
  • 次男:相続財産2,000万円 → 手数料 23,000円

合計:95,000円(43,000円+29,000円+23,000円)となります。

また、公正証書遺言を作成すると、原本、正本及び謄本が各1部交付されますが、交付手数料が、遺言書の枚数×500円かかります(遺言書の枚数が縦書きで4枚又は横書きで3枚を超える場合は、超えた枚数×250円を加算)。

なお、以下のような場合は、前記の表から算定した額に加算がなされます。

  • 相続財産の総額が1億円以下の場合、11,000円加算
  • 遺言書の中で祭祀承継者を指定する場合、11,000円加算
  • 前に作成した遺言を撤回する場合、11,000円加算
  • 病院や自宅に出張してもらう場合、前記の表から算定した手数料の額にその2分の1を加算し、別途日当(4時間未満:10,000円、4時間以上:20,000円)と交通費の実費(公証役場からの往復のタクシー代等)を加算

証人手数料

公正証書遺言をするには、証人2人以上の立会いが必要です。

証人を自分で手配する場合はこの手数料は不要です。謝礼については遺言者と証人との間で自由に取り決めて構いません。

公証役場で証人の紹介を受けた場合、証人1人につき6,000円程度の手数料が必要です。謝礼の金額は、公証役場によって異なります。

以上は証人1名分ですので、2名を依頼すると、この倍額になります。証人の手数料は、証人に直接支払います。

なお、専門家に遺言書の作成を依頼する場合は、通常、専門家やその事務員が証人も引き受けてくれます。

別途の報酬が必要かどうかやその料金設定については専門家ごとに異なりますが、次の3つのパターンがあるようです。

  • 2人分の証人立会い料が基本料金に含まれている
  • 1人分の証人立会い料が基本料金に含まれていて、2人の証人の立会いを依頼する場合は追加料金が必要
  • 証人立会い料が基本料金に含まれていない

証人立会いが別途料金の場合の料金の相場は、証人1人につき1万円前後のようです。

専門家報酬

公正証書遺言の文案の作成を専門家に依頼する場合は報酬が必要です。

主に次の専門家が遺言書作成サービスを提供しています。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士

専門家への報酬は一律で決まっているわけではなく、一人ひとり異なります。

公正証書遺言の作成支援を専門家に依頼するメリット

遺言の文面は公証人が作成してくれるのに、費用をかけてまで文案の作成を専門家に依頼する必要はないように思えるかもしれませんが、文案の作成を専門家に依頼することには主にのようなメリットがあります。

  • 遺言内容についての相談ができる
  • 手間を削減できる
  • 遺言執行者になってもらえる

以下、それぞれについて説明します。

遺言内容についての相談ができる

公正証書遺言では、遺言者が公証人に遺言内容を口述し、その内容通りに、公証人が遺言書を作成します。

公証人は遺言内容をどうするかについての相談には応じてくれません。

遺言内容いかんによっては、相続人や受遺者の間でトラブルになるおそれがあり、また、税金も変わってくるため、遺言内容は重要です。

遺言内容についての相談ができる専門家は、基本的には弁護士です(税金対策のために遺言内容を相談したい場合は税理士が対象)。

司法書士や行政書士は、遺言者が決めた遺言内容に沿って遺言書を作成することはできますが、遺言内容を考えるところから依頼することは、弁護士法に反する可能性があり、基本的にはできません。

手間を削減できる

それでは、公正証書遺言の場合は、司法書士や行政書士に依頼する意味はまったくないのかというと、そういうわけではありません。

手間が削減できるというメリットがあります。

公正証書遺言をするためには、必要書類を収集したり、証人になってくれる人を探したりする手間が生じますし、また、公証役場に最低でも2回は行かなければなりません。

専門家に依頼すると、書類の収集や証人の立会いもやってもらえますし、遺言者が公証役場に行くのも1回だけで十分です。

遺言執行者になってもらえる

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。

遺言が執行される時には、遺言者は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。

そこで、遺言執行者がいると、遺言者の代わりに遺言の内容を実現させることができるのです。

遺言執行者は、必ずしも指定しなければならないわけではありません。

遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者(遺贈によって財産をもらい受ける人)が遺言の内容を実現させるための手続きを行うことになります。また、相続開始後に裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。

しかし、相続手続きの知識のない相続人や受遺者自らが、遺言の内容を実現する手続きを進めることや遺言執行者の選任を申し立てることは煩雑で大変です。

遺言執行者がいない場合は、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になる手続きも多数あり、手続きの度に相続人全員に連絡して、署名などを集めるのは、なかなか大変です。

その点、遺言執行者は、単独で相続手続きを行うことができるので、スムーズに進めることができます。

また、相続人や受遺者が単独で行うことができる手続きもありますが、一部の相続人や受遺者が勝手な手続きをしてしまうリスクもあります。

ですので、遺言執行者が必須でないケースでも遺言執行者を選定した方が手続きが安全かつスムーズに進むでしょう。

遺言執行者は、専門家ではなくても、相続人や受遺者であっても構いません。

しかし、通常、相続人や受遺者は、遺言執行に関する知識がないでしょうから、適切な遺言執行ができない可能性もありますし、どうにかできたとしても大きな負担になるでしょう。

遺言作成を依頼した専門家に遺言執行者もまとめて依頼するのがスムーズでしょう。

まとめ

以上、公正証書遺言の費用について説明しました。

公正証書遺言は、他の種類の遺言よりも費用はかかりますが、もっともお勧めの形式です。また、公正証書遺言を検討する際は、一度、相続の専門家に相談してみることをお勧めします。

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