兄弟姉妹の相続|相続順位や割合、代襲相続や異母兄弟の場合、相続の揉めやすいケースも紹介【行政書士監修】

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2020年10月27日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
兄弟姉妹の相続|相続順位や割合、代襲相続や異母兄弟の場合、相続の揉めやすいケースも紹介【行政書士監修】

相続において親族間にトラブルが起こることは珍しくありません。

中でも兄弟姉妹については、親の死後、遺産相続のために関係が悪化したり、また兄弟姉妹が相続人となる場合、配偶者や子が相続人となる場合と比べて一部取り扱いが異なるものもあったり、兄弟姉妹だからこそ起こりやすいトラブルもあります。

この記事では、兄弟姉妹にかかわる相続について、法定相続順位と法定相続分の基礎知識、2割加算、代襲相続など兄弟姉妹が相続人となった場合と第一順位、第二順位との違い、さらに相続トラブルを未然に防ぐための対策、争いが起きてしまったときの検討すべき事項などについてご紹介します。

この記事の監修者

遺言・相続の行政書士ゆかわ事務所

湯川まさゆき

東京・中野区にある、遺言・相続・婚姻関係を専門業務とする行政書士事務所。東京都全域で、遺言作成の時から、お年寄り見守り支援、後見人業務、終末期医療の宣言、そして亡くなった後までトータルでサポート。

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兄弟姉妹の相続

兄弟姉妹が関係する相続には2通りあります。

ひとつは、親が亡くなり複数人の子どもが相続人になる場合。もうひとつは、亡くなったのが兄弟姉妹のだれかであった場合です。

親が被相続人の場合、相続割合は被相続人が亡くなったときの配偶者の有無や、兄弟姉妹の人数によって異なります。この場合、兄弟姉妹の間で誰がどの財産を、どのくらい承継するのかという点で合意が取れないと、トラブルにつながる可能性があります。

ふたつ目は、兄弟姉妹の内のひとりが亡くなって、残った兄弟姉妹が相続人となる場合です。

例えば相続税額にその2割に相当する金額が加算されたり、兄弟姉妹には遺留分がないなど、被相続人の配偶者や子が相続人の場合とは異なる点があり、その部分が揉めやすい部分です。

まず、兄弟姉妹の相続はどのような仕組みなのか、どんなことを注意すればよいのかを解説します。そのあとに揉めてトラブルになりやすいケースを説明していきます。

兄弟姉妹の相続順位・法定相続分

相続では誰が相続するか、どのくらい相続するかということを決めていきます。この誰がいくら相続するのかについては民法によって決められています。

まず、誰が法律上の相続人(法定相続人)となるのかですが、法定相続人は被相続人との関係によって相続順位と割合が定められています。

被相続人の配偶者は常に相続人となり、第一順位が被相続人の子、第二順位が被相続人の親、そして第三順位が被相続人の兄弟姉妹となります。

法定相続人と相続の割合

法定相続人の組み合わせ法定相続分
配偶者のみ配偶者:全部
子のみ子:全部
親のみ親:全部
兄弟姉妹のみ兄弟姉妹:全部
配偶者+子配偶者:1/2子:1/2
配偶者+親配偶者:2/3親:1/3
配偶者+兄弟姉妹配偶者:3/4兄弟姉妹:1/4
いい相続 法定相続人

代襲相続

相続開始のタイミングで相続人がすでに亡くなっている場合は代襲相続が認められています。
代襲相続とは、相続開始時に相続人が亡くなっていた場合、相続人のかわりに相続人の子(相続人が親の場合はそのさらに親)が相続人となるもので、子や親の場合は何代でも代襲相続が可能ですが、被相続人の兄弟姉妹は代襲相続が1代のみ(被相続人の甥・姪まで)と定められています。
代襲相続人 甥姪

兄弟姉妹が相続人となるケース

相続_兄弟姉妹
では次に兄弟姉妹が相続人となるケースはどのような場合か、また、兄弟姉妹が相続人となった場合の法定相続分について見ていきましょう。

ケース1:親の財産を兄弟姉妹で相続する場合

被相続人が親である場合、兄弟姉妹は被相続人の子であるため法定相続人となりますが、法定相続分は被相続人の配偶者がいるかいないかによって変わります。

配偶者が存命の場合

父が亡くなり、母はまだ生きているといった場合、法定相続人と法定相続分は下の表のようになります。

法定相続人法定相続分
配偶者1/2
被相続人の子たち(兄弟姉妹)1/2(兄弟姉妹の人数で等分)

配偶者がすでに亡くなっている場合

配偶者がすでに亡くなっている場合に加え、相続開始時にすでに配偶者と離婚している場合もこちらのパターンに該当します。

この場合、被相続人の子である兄弟姉妹のみが法定相続人となるため、法定相続分は相続財産を兄弟姉妹で均分した割合となります。例えば2人兄弟であればそれぞれ財産の1/2ずつ、3人兄弟であれば1/3ずつが法定相続分です。

ケース2:兄弟姉妹の財産を兄弟姉妹で相続する場合

被相続人の兄弟姉妹の相続順位は第三順位となっており、兄弟姉妹が相続人になるケースは少ないといえます。

被相続人の兄弟姉妹が相続人になるのか、相続人になる場合の相続分はどのくらいなのかを次の3パターンで確認していきましょう。

  1. 被相続人に配偶者と子がいる場合
  2. 被相続人に配偶者はいるが子がいない場合
  3. 被相続人に配偶者がいない場合

1. 被相続人に配偶者と子がいる場合

被相続人に配偶者と子がいる場合、次の条件を満たす場合に兄弟姉妹が被相続人となります。

  • 被相続人の子が亡くなっており、代襲相続できる孫・曾孫などの直系卑属がいない
  • 被相続人の父・母ともに亡くなっており、代襲相続できる祖父母・曾祖父母などの直系尊属がいない

または、

  • 被相続人の子、父・母がともに相続放棄をしている

相続放棄についてですが、例えば父親が死亡した時に、その配偶者に財産を集中させる目的で、子ども達が相続放棄を検討している場合は要注意です。

子供たちが家庭裁判所で相続放棄の手続きをとった場合、次順位である父親の直系尊属、直系尊属が既に死亡している場合、父親の兄弟姉妹が相続人になります。つまり、父親の配偶者と、父親の兄弟姉妹が共同相続人になってしまうのです。相続放棄を検討している場合は専門家に相談しましょう。

なお、被相続人の子(もしくは孫などの直系卑属)がいる場合は兄弟姉妹は相続人とならないため、当然法定相続分もありません。また、直系卑属がいなくても被相続人の父母(もしくは祖父母などの直系尊属)がいる場合にも兄弟姉妹は相続人とならないため、同様に法定相続分はありません。

被相続人に配偶者はいるけれど直系尊属・直系卑属がおらず、兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分は以下の通りです。

被相続人との関係法定相続分
被相続人の配偶者相続財産の3/4
被相続人の兄弟姉妹相続財産の1/4(兄弟姉妹の人数で等分)

2. 被相続人に配偶者はいるが子がいない場合

被相続人に配偶者はいるが子はいないというパターンでは、父・母などの直系尊属がいない場合に被相続人の兄弟姉妹が相続人となります

直系尊属がおらず、兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分は、「1、被相続人に配偶者と子がいる場合」で兄弟姉妹が相続人となる場合の相続分と同様です。

3. 被相続人に配偶者がいない場合

被相続人に配偶者も子供もいない場合、父・母などの直系尊属がいなければ被相続人の兄弟姉妹が相続人となります
このようなケースで被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合の相続分は次の通りです。

被相続人との関係法定相続分
被相続人の兄弟姉妹相続財産のすべて(兄弟姉妹の人数で等分)

兄弟姉妹が相続人になる場合に注意したいポイント

相続_兄弟姉妹
ここまでご紹介してきたように、法定相続人となれるのは被相続人の配偶者・子・親・兄弟姉妹ですが、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には、配偶者・子・親が相続人となる場合と差があります。

これは、被相続人の兄弟姉妹はすでに独立し生計を立てている事が多く、優先的に相続を行う必要がないと考えられていることや、兄弟姉妹は被相続人との関係が遠いなどの理由があるためです。

では被相続人の兄弟姉妹が相続人になることで差がつく取り扱いにはどういったものがあるのか、具体的に見ていきましょう。

相続税が2割加算される

被相続人の兄弟姉妹に相続税が発生した場合、被相続人の兄弟姉妹の相続税には、算出された相続税額に税額の2割に相当する金額が加算されることとなっています。これを2割加算といいます。

例えば、被相続人の兄が相続した財産に対して100万円の相続税が発生した場合、納付する際には相続税額の2割である20万円が加算され、120万円を納付する必要があります。

POINT
相続税の2割加算の対象者は?

相続税の2割加算が適用されるのは被相続人の1親等の血族および配偶者以外の人が財産を相続した場合と定められています。
兄弟姉妹以外にも孫や子供の配偶者、親族以外の人がこの2割加算の対象となります。

養子については子と同じ扱いとなるため2割加算の対象外となりますが、被相続人の孫を養子にした場合は2割加算の対象となります。

兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪までの一代限り

代襲相続についても兄弟姉妹に関しては制限があります。

父母などの直系尊属・子などの直系卑属については相続開始時に相続人が亡くなっていた場合、何代でも代襲相続が可能です。

一方で被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、代襲相続は1代限りとなり、兄弟姉妹の子(被相続人から見て甥・姪)も亡くなっている場合はその兄弟姉妹の相続権が消滅します。

例えば、妻も子供もいないAさんが亡くなり、両親もすでに亡くなっているため、法定相続人が兄弟のBさん・Cさん・Dさんの3人であるとしましょう。

さらに、Aさんが亡くなった時点ですでにBさんも亡くなっており、Bさんには子が1人(Eさんとします)いたとします。

このEさんが相続開始時点で存命であれば、代襲相続でEさんがBさんのかわりに相続人となります。

つまり、相続人はCさん・Dさん・Eさんの3人となり、法定相続分は財産の1/3ずつになります。

しかしながらEさんも相続開始時点で死亡している場合、代襲相続できるのは1代限りですから、Bさんの相続権は消滅してしまいます。

この場合の相続人はCさん・Dさんの2人になり、法定相続分は財産の1/2ずつとなります。

兄弟姉妹間の相続は遺留分がなく、遺留分侵害請求権もない

例えば被相続人が特定の人に対し全額を相続させるという遺言を残していた場合、配偶者や子であれば法律で認められた遺留分については、遺留分侵害額請求ができます。

しかし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません

遺留分の割合

相続人の組み合わせ遺留分各人の遺留分
配偶者と子1/2配偶者:1/4、子:1/4
配偶者と直系尊属1/2配偶者:2/6、直系尊属:1/6
配偶者と兄弟姉妹1/2配偶者:1/2、兄弟姉妹:なし
配偶者のみ1/2配偶者:1/2
子のみ1/2子:1/2
親のみ1/3直系尊属:1/3
兄弟姉妹のみなしなし

遺留分は相続人の生活保障としての意味合いや、被相続人の財産形成への貢献分の清算の意味合いがあり、被相続人との関係が遠いとされている兄弟姉妹には遺留分は認められないのです。

遺留分がないということは当然遺留分侵害額請求権もありません。被相続人が生前贈与を行っていたり、遺言に「兄弟姉妹には財産を相続させない」旨を遺していた場合、兄弟姉妹は遺産の取り分がなくなることもあるのです。

異母兄弟姉妹(異父兄弟姉妹)の相続割合

兄弟姉妹がかかわる相続において、被相続人との血縁関係によって相続の割合が異なる場合があります。

被相続人の複数の子(兄弟姉妹)が相続する場合

被相続人の子が複数いる場合、その相続人(兄弟姉妹)の間で、法定相続分に差はありません。第一順位の法定相続分を、兄弟姉妹の人数で均等に分けた分が法定相続分となります。

また、相続人が婚姻関係のある男女の間に生まれた嫡出子であっても、例えば愛人など、婚姻関係にない男女の間に生まれた非嫡出子であっても、認知がされていれば、相続分に差はありません。さらに、養子も、養子縁組の日から血縁関係と同じ親族関係となりますので、養親の実子と同様に相続できます。

被相続人の兄弟姉妹が相続する場合

被相続人の兄弟姉妹が、相続財産を相続する場合、両親が同じ全血兄弟姉妹と、父親また母親のどちらか一方のみが同じ半血兄弟姉妹では、相続分が異なります。

両親が同じ全血兄弟姉妹の場合、相続分は兄弟姉妹で均等になります。しかし、例えば前妻の子であるなど片親のみ同じ半血兄弟姉妹の場合、相続分は全血兄弟姉妹の2分の1の割合となります。

異母兄弟の相続についての詳細は「異母兄弟も相続人!相続の順位と相続割合、代襲相続、遺留分など完全解説!」で詳しく説明しています。

兄弟姉妹の間で揉めやすいケースとは?


兄弟姉妹間での相続時のトラブルにはいくつかの起きやすいポイントがあります。できる限り揉めない相続を行うためにも、あらかじめどういったことでトラブルが起きやすいのか把握しておきましょう。

1.遺産が不動産だけのケース

被相続人の配偶者と、被相続人の兄弟姉妹が相続人であるパターンにおいて、相続財産である不動産に配偶者が住み続けるケースでは法定相続割合で分割するのが困難であるためトラブルになることがあります。

相続財産として不動産はあるが、兄弟姉妹の相続人に預貯金を分配できないという場合、その不動産を売却したお金を分割することも可能ですが、そこに住んでいる人がいる場合には住む家を失ってしまうことになります。

このようなことが予想される場合には、あらかじめ遺言書を作成し、配偶者ができる限りの財産を相続できるように対策をしたほうがよいでしょう。

2.新たな相続人の存在が明らかになり揉めるケース

被相続人の死後、故人に非嫡出子がいたり、知らないうちに孫と養子縁組していたりと、新たな相続人の存在が明らかになることがあります。万一、遺産分割協議書の作成後に新たな相続人の存在が判明した場合、作成した遺産分割協議は無効となり、遺産分割協議をやり直す必要があります。

特に相続税の申告をしていた場合、配偶者控除や小規模宅地等の特例は相続税の申告期限(10ヵ月)内に申告を済ませることで適用されるものであるため、遺産分割協議のやり直しを行うことで再協議に時間がかかり、これらの制度が適用できなくなる事態も考えられます。

こういった事態を防ぐには、相続人を確定させるための相続人調査をもれなく行うことが大切です。相続人調査は自分でも行うことは可能ですが、見落しなどがないようにするためには弁護士などの専門家に依頼することも検討しましょう。

POINT
相続で嫡出子と非嫡出子の扱いに差はある?

相続において、嫡出子と非嫡出子の扱いに差はありません

以前においては民法で非嫡出子の法定相続分は嫡出子の1/2とされていましたが、平成25年の法改正で嫡出子と同じ割合に変更されました。

3.介護や身の回りの世話をした兄弟姉妹が寄与分を主張し揉めるケース

相続で寄与分の主張があった場合もトラブルが起きやすいといえます。
兄弟姉妹には遺留分は認められていませんが、寄与分を主張することは可能です。
寄与分とは被相続人の生前、被相続人の財産の増加や維持に特別の寄与をした人に与えられる権利で、

  • 一人身の被相続人の世話を最後までしていた
  • 被相続人の個人事業を無償で手伝っていた
  • 被相続人に金銭的な援助をしていた

などのケースが該当します。

特定の相続人に寄与分を認めれば、その分他の相続人の遺産の取り分が少なくなってしまうため、寄与分が主張された場合スムーズに遺産の分割を行うことは難しくなることが多くなります。

また、寄与分を証明することは難しく、寄与の程度などによって個別に決まるものであるため、この点においても争いが起きやすいといえるでしょう。

寄与分の主張によって遺産分割協議がこじれた場合、調停や裁判に移行するケースが多いため、早めに専門家に相談する方がよいでしょう。

2.生前に被相続人から経済的援助を受けていた兄弟姉妹がいて揉めるケース

被相続人の生前、経済的な援助を受けていた場合に特別受益が認められることがあります。
特別受益が認められた相続人については、他の相続人と不公平にならないように相続分から特別受益分を控除して相続分を算定することとなります。
特別受益として該当する可能性があるものの例として、

  • 遺贈
  • 学費
  • 生活費の援助

などが挙げられますが、特別受益が認められるかは個別の判断となります。
被相続人と相続人(兄弟姉妹)の間で、援助を受けた人と受けていない人とのトラブルが発生する可能性があります。

相続争いを予防するためにできること

相続_弁護士

遺言書の作成

相続争いを生まないための対策はいくつかありますが、まずしておきたい対策が遺言書の作成です。

遺言の内容は法定相続人・法定相続分よりも優先されるため、遺言書を作成することで相続に被相続人の意思を反映させることができます。

特定の相続人に財産を相続させたい場合はもちろん、財産を残したくない相続人がいる場合にも遺言書を遺しておくことが有効です。

また、遺言であらかじめ相続争いが起きそうな事項についての取り扱いを指定をしておくことで相続争いが起きにくくなります。

ただし、相続争いを避けるために遺言を遺したとしても、遺言の内容が新たな争いを生んでしまったら意味がありません。

例えば、遺留分は遺言よりも優先されますが、遺言内容が遺留分に対して配慮がされていないものであれば相続人同士で争いになってしまうことも考えられます。

遺言を遺す際はあらゆる角度から争いの火種にならないかを検討し、隙のない遺言書を作成することが大切です。

また、遺言書の主な形式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれに満たすべき条件や気を付けるべきポイントがあります。これらが守られていないとせっかくの遺言内容が無効になってしまうこともあるため、細心の注意を払うようにしましょう。

自筆証書遺言

自筆証書遺言」は遺言者が遺言書を自筆で紙に書いて作成する方法で、一番手軽かつ費用のかからない遺言の作成方法です。

一方で、特別な手続きなく作成できるため、偽造や隠ぺいが疑われてしまうことがあったり、内容や作成方法に不備があった場合には遺言内容が無効となってしまうこともあるため、作成方法や保管場所などにきちんと気を配る必要があります。

なお、2020年7月から自筆証書遺言保管制度がスタートし、自筆証書遺言を遺言者が亡くなるまで遺言書保管所(全国の法務局)で保管してくれるようになりました。

公正証書遺言

公正証書遺言」は、公証人が遺言者から内容を聞き取りながら作成する遺言です。証人2人が立会いのもと作成され、完成した遺言書は公証人役場で保管されることとなります。

公証人が作成するため不備が少ないこと、保管もしてもらえるため偽造・紛失のリスクが低いことがメリットです。ただし、作成費用は相続財産の総額で変動するため、財産の総額が高ければ高いほど作成費用も高くなります。
秘密証書遺言

秘密証書遺言」は遺言者が作成した遺言書を公証役場に持ち込み、その遺言書が遺言者のものであると証明することで、遺言の内容は秘密にしつつ、遺言書の存在を明らかにできるというものです。

遺言内容が誰にも知られない一方、不備があった場合に遺言内容が無効になる恐れがあること、自身で遺言書を保管するため紛失等の恐れがあることなどに注意が必要です。

生命保険への加入

兄弟姉妹間の相続トラブルを回避する相続対策として生命保険への加入も考えられます。特にめぼしい財産が自宅などの不動産しかないという場合にはぜひ検討しておきたい対策です。
保険金は他の財産と違い、遺産分割において以下のような取り扱いがなされます。

  • 保険金は遺産分割の対象外となる
  • 保険金は遺留分の計算からも原則除かれる

分ける財産が不動産しかない場合、公平に分割することが難しくなりますが、現金があることで公平に分割できる可能性が高くなります。

また、保険金は相続税対策としても有効です。保険金には非課税枠が設定されており、同じ額の資産でも保険金を含む方が税額が低くなるケースが多いです。

遺産の分割方法を検討する

遺産の分割方法を検討してみましょう。
分割の方法には大きく4つの方法があり、それぞれに特徴があります。

  1. 共有分割
  2. 現物分割
  3. 代償分割
  4. 換価分割

1. 共有分割

1つの財産について、相続人それぞれが持ち分を決めて共有するという方法です。特に土地などの不動産については、売却せずに公平に相続をすることが可能です。

ただし権利が複数の兄弟姉妹や甥姪の相続人に分散するため、不動産を利用・売却しようとしたときに手続きが面倒になるなど、デメリットも存在します。また、次世代へさらに相続が行われた場合、持ち分が細分化されて権利関係がどんどん複雑になっていく可能性もあります。

2. 現物分割

現物分割は財産目録の項目ごとに財産を分割する方法です。

例えば、被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人だった場合、被相続人の配偶者が引き続き住む不動産を取得するケースです。一般的に行われる分割方法で、分かりやすいのがメリットです。

3. 代償分割

相続する財産の価値が相続人ごとに大幅に違う場合、相続人間で平等になるように財産を分ける方法です。

例えば長男が評価額2,500万円の土地を相続し、長女が1,500万円の現金を相続するとなった場合、長男と長女に金額の差ができてしまいます。

そこで長男が長女に500万円を支払うことにすればどちらにも2,000万円分の資産がプラスされることになり、公平性が保たれる、というのが代償分割の考え方です。

代償金が用意できる場合には有効な方法ですが、代償金が用意できない場合には別の方法で分割する必要があります。

代償分割のメリット・デメリット|相続税・贈与税・譲渡所得税はどうなる?

4. 換価分割

不動産などの分割が難しい資産について、売却するなどして現金にした状態で分割する方法です。

例えば、一人暮らしだった兄弟姉妹の不動産を残った兄弟姉妹が相続したケースです。それぞれが結婚して生計が別個になっていて、引き続き誰も住まない場合には売却して公平に分ける事ができます。

不動産の換価分割のメリット・デメリット、相続税・贈与税・譲渡所得税はどうなる?

相続争いが起きてしまったら

いくら事前に対策をしていても争いが100%起きないわけではありません。相続争いが起きてしまったときに大切なのは相続人全員が納得する着地点を探すことです。

ここでは解決を目指すために検討するべきポイントについてご紹介していきます。

相続放棄を検討する

長年連絡のなかった兄弟姉妹が死亡し、自分が相続人になる事もあります。

その場合、一緒に暮らしていたわけではないので、被相続人の財産や負債を把握している事は少ないでしょう。また、相続人である兄弟姉妹や甥姪との連絡が負担になる場合もあります。

最後の手段として相続放棄も選択肢の一つですが、メリット・デメリットがありますので、専門家に相談しましょう。 

専門家に相談する

相続人調査や、兄弟姉妹の遺産を相続する際に必要な戸籍謄本の収集は非常に手間がかかります。

特に相続人調査においては、漏れがあると遺産分割協議のやり直しが必要になるなど、その後にかかる労力も大きなものとなるため、専門家に相続手続きを代行してもらうことでそういったリスクも回避することができます。

また、寄与分や特別受益が認められる場合、意見のぶつかり合いから話し合いがこじれる可能性が高く、一度こじれてしまうと当人同士での解決は難しくなってしまいます

そういったケースでは調停や裁判に移行することもあります。

弁護士なしで対処すると不利益を被る可能性も出てきてしまうため、トラブルが起こりそうな場合には、できるだけ早く弁護士に相談をするべきでしょう。

なお、弁護士にはそれぞれ得意分野があるため、弁護士を選ぶ際は相続を得意とする弁護士を選ぶようにしましょう。

まとめ

兄弟姉妹間での相続トラブルについて、原因や対策をご紹介してきました。

  • 相続争いを生まないための対策には遺言書の作成生命保険への加入
  • 争いが起きてしまったら相続放棄弁護士への相談

などを検討してみましょう。

「自分の死後に相続でもめないために遺言書を作りたい」という方には司法書士や行政書士に依頼します。費用が気になる方は相続費用見積ガイドで無料で見積りを取り寄せられますので是非ご活用ください。

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