相続放棄にかかる費用。自分でする時と専門家に依頼する場合をケース別に【司法書士監修】

更新日

本記事の内容は、原則、記事執筆日(2020年12月2日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
相続放棄にかかる費用
相続放棄にかかる費用。自分でする時と専門家に依頼する場合をケース別に【司法書士監修】

相続放棄にかかる費用には、家庭裁判所に支払う手数料や書類の請求にかかる手数料などがあります。また、専門家に依頼する場合にはその費用も発生します。

この記事では、相続放棄の手続きに共通してかかる手数料、ケースによっては必要な費用、さらに専門家に依頼する場合の費用相場など、相続放棄の手続きにかかる費用とその内訳をご説明します。

記事を3行で先読み!
この記事はこんな方におすすめ:相続放棄の手続きを検討している方

  • 相続放棄に必要な書類は被相続人との関係によっても異なり、費用も変わる
  • 場合によっては、家庭裁判所に出向く際の交通費も考慮しておく
  • 弁護士は、家庭裁判所からの呼び出しを含め、相続放棄の手続きをすべて依頼できる

この記事の監修者

優司法書士法人

上村拓郎

京都市内の司法書士事務所にて約8年間の実務経験を積み、2007年9月に独立。不動産の名義変更、相続、会社設立の他、住宅ローンの借換支援、相続対策など提案型事務所を目指して活動中。

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相続放棄の手続きにかかる費用

いい相続 相続放棄_費用

申述にかかる手数料や必要書類にかかる費用など、相続放棄の手続きそのものにかかる費用は主に次の2つです。ただし戸籍については相続放棄を希望する相続人と被相続人の関係によっても異なります。

  • 収入印紙と郵便切手代
  • 戸籍関係の書類の取得にかかる費用

収入印紙と郵便切手

家庭裁判所に納める手数料は、800円分の収入印紙で支払います。郵便切手は裁判所からの連絡用です。金額は、どの家庭裁判所で手続きするかによって異なるため、管轄の家庭裁判所のホームページなどで確認してください。目安としては、1名につき400円程度です。

戸籍関係の書類にかかる費用

相続放棄をするのに必要な書類は、それぞれ次のようになります。

相続放棄に必要な書類

被相続人との関係必要な書類
全員共通1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附
2. 相続放棄する人の戸籍謄本
配偶者1. 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
被相続人の子または代襲相続者1. 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
2. 代襲相続者が申述人の場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
被相続人の父母・祖父母(直系尊属)1. 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
2. 被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、死亡した被相続人の子およびその代襲者の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
3. 被相続人の直系尊属に死亡している人がいる場合、死亡した直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
被相続人の兄弟姉妹または代襲相続者1. 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
2. 直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本
3. 被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、死亡した被相続人の子およびその代襲者の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
4. 代襲相続者が申述人の場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

上記のうち、戸籍の請求にかかる手数料は、全国共通です。

  • 戸籍謄本 1通につき450円
  • 除籍謄本 1通につき750円
POINT
除籍謄本

除籍謄本とは、ある戸籍に載っている人たちが、結婚や死亡などで抜けた結果、誰もいなくなってしまい閉鎖された戸籍のことです。被相続人の状況によっては「被相続人の死亡の記載のある戸籍」や「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」に含まれます。

住民票除票の請求に必要な手数料は各自治体によって異なりますが、1通につき350円ほどです。住民票附票は、亡くなった人や転出した人の住民票のことで請求手続きは住民票と変わりません。

本籍地や住所地が遠方のときには、郵便で請求できます。その場合には、往復の郵便切手代が必要です。また郵送の場合には費用の支払いに郵便局で購入できる定額小為替証書というものを利用します。

POINT
請求先

住民票除票は住所地の市区町村に請求します。戸籍謄本や戸籍附票等は本籍地の市区町村に請求します。古い除籍謄本等を請求する場合には、市区町村合併で請求先が変わっている場合があるので注意が必要です。

手続きにかかる費用の合計

戸籍関係の書類の枚数が、被相続人との関係によって大きく異なりますが、被相続人の子が申請する場合は次のようになります。

  • 収入印紙 800円
  • 郵便切手 400円(裁判所によって異なる)
  • 被相続人の住民票除票 350円
  • 子の戸籍謄本 450円
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本 450円
  • 上記の書類をすべて別の役所に郵送で取り寄せた場合の切手代 84円×6枚

上記すべてを合計すると、2,954円です。

相続放棄をおこなう場合、ケースによってかかる費用

相続放棄を自分でおこなう際にかかる費用には、次のような費用がかかる場合もあります。

  • 交通費
  • 財産の管理に必要な費用
  • 相続放棄申述受理証明書の発行手数料

相続放棄は、簡単なケースであれば、家庭裁判所に支払う費用だけで済みますが、場合によっては別途費用がかかることがあります。また、相続放棄後にかかる費用についても知っておくことが必要です。

交通費

家庭裁判所の窓口に書類を提出するときはもちろんですが、郵送で提出した場合でも、家庭裁判所が必要だと判断したときには、面談が設けられます。そのときには、家庭裁判所に出向くことが必要です。相続放棄の申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。飛行機や新幹線での移動が必要なケースでは、交通費に加えて、宿泊費も必要になるでしょう。

財産の管理に必要な費用

相続人には、被相続人の財産を管理する義務があります。これは、相続放棄をした後も「次の相続人が財産の管理をはじめるまで」終わりません。財産が預貯金だけであれば管理に費用はかかりませんが、不動産や土地が含まれるときには注意が必要です。

次の相続人がいないが管理者としての責任を放棄したい場合には、裁判所に相続財産管理人の選任をしてもらう必要がありますが、その選任費用(予納金等30万円~100万円程度)は管理者が負担せざるを得ない場合が多いです。

相続放棄申述受理証明書の発行手数料

相続放棄の手続きが完了したことを知らせるために、裁判所からは相続放棄申述受理通知書が送付されます。これを相続放棄したことの証明として使用することもできますが、銀行口座の解約等では、「相続放棄申述受理証明書」という相続放棄の手続きをしたことを証明する書類が必要です。

この書類の請求には、1通につき150円の手数料がかかります。相続放棄の手続きをしたのと同じ家庭裁判所に請求しますが、住所氏名を書いた返信用封筒と切手を同封すれば、郵送で請求することも可能です。

弁護士に相続放棄の手続きを依頼する費用

弁護士は大きく分けて刑事事件と民事事件を取り扱います。相続で依頼することになるのは、民事事件を主に取り扱う弁護士です。民事事件の弁護士には、離婚や交通事故、借金の取り立てなど、さまざまなトラブルの解決を依頼できます。

公的な書類の作成や必要書類を代理で集めるだけでなく、相手との交渉や裁判所への手続き、訴訟まですべてお任せすることが可能です。

その代わりに、司法書士に比べると費用の相場が高めになります。

弁護士に依頼を検討する方がいいケース

弁護士は、家庭裁判所からの呼び出しを含め、相続放棄の手続きをすべて依頼することが可能です。また、被相続人が借金をした相手や額によっては、相続放棄の検討中であっても、相続人に対して、しつこく取り立てをおこなうことがあります。

ほかにも相続人同士でもめるということもあるでしょう。このようなときの対応も弁護士であれば依頼が可能です。

次のようなケースは、弁護士への依頼を検討したほうが良いといえます。

  • 書類作成から手続きまですべて任せたい
  • 管轄する家庭裁判所が遠く、面談なども対応して欲しい
  • 相続放棄に関して、誰かと交渉の必要がある
  • 相続問題がある
  • 相続に関わりたくない
  • 相続放棄が認められない可能性がある

期限内の相続放棄であれば、相続放棄は認められるケースが多いですが、3ヵ月を超えて特別な理由で申し立てるケースや年月経ってから相続人であることが分かったケースなどでは、事情が認められず、却下されてしまうことがあります。

却下されたときには、即時抗告という不服申し立てが可能です。しかし、却下されてから、即時抗告できる期間が短いことや手続きの複雑さからご自身で手続きをしたり、その時になって弁護士を探したりするのは難しいといえるでしょう。そのため、却下される可能性があるケースでは、相続放棄の手続きの時点で弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士の費用の相場

弁護士費用の相場は以下の通りです。

  • 相談料:0円〜10,000円/60分
  • 手数料:50,000~200,000円ほど

弁護士への依頼では、成功報酬が必要な案件もありますが、相続放棄では必要とされるケースは少ないようです。ただし、これらの費用はあくまでも目安です。実際の費用は個々の弁護士事務所に確認してください。

司法書士に相続放棄の手続きを依頼する場合の費用

司法書士は、法的な書類の作成を本人に代わってしてくれます。具体的には、不動産の売買・譲渡に伴う名義変更を届け出る登記や相続放棄申述書のような裁判所に提出する書類の代理作成、遺言書作成などです。また、手続きに必要な戸籍関係の書類に関しても代わりに集めてもらうことができます。

加えて、債務整理や民事事件に関しても対応してもらうこともできます。ただし、これらの業務については、法律により「140万円を超えない範囲」という条件付きです。

司法書士に依頼を検討する方が良いケース

司法書士の業務には制限があるため、相続放棄の手続きをすべて依頼することはできません。家庭裁判所からの内容に関する質問への対応(照会書・面談)は、相続人自身でおこないます。

そのため、目立ったトラブルがなく、以下のようなことを専門家に依頼したい場合に、司法書士への依頼を検討したほうが良いといえるでしょう。

  • 相続放棄申述書の作成をして欲しい
  • 戸籍関係の書類を集めて欲しい

また、司法書士に依頼する方が、手数料の相場が安いため、「専門家に相談したいけれども、費用は抑えたい」というケースでも司法書士への依頼をおすすめします。

司法書士の費用の相場

司法書士に相続放棄に関する依頼をするときには、手続きの期限である3ヵ月を基準に、期限内の手続きを依頼する場合と期限後の手続きを依頼する場合で金額が異なることがあります。ただし、3ヵ月を超えての手続きは専門家に依頼をしても認められないケースもありますので、注意してください。

  • 相談料:0円〜10,000円/60分
  • 手数料:40,000~70,000円ほど

費用はあくまでも目安です。実際の費用は司法書士事務所に確認してください。

相続放棄の手続きは自分でするか?専門家に依頼するか?

相続放棄の手続き自体は、戸籍関係の書類さえ集められれば、それほど難しいものではありません。そのため、内容が単純なケースであれば、自分で手続きするのが最も費用も抑えられる方法です。

しかし、債権者やほかの相続人とのトラブルがあるケースや被相続人の死亡から時間が経って手続きをするような事情のあるケースでは、専門家に相談することをおすすめします。土地などの財産の価値だけを知りたいときには、税理士に相談することも可能です。

また、相続放棄したい理由が、被相続人の多額の借金といったケースでは、相続放棄の手続きを誤ると、マイナスの遺産を引き継いでしまう可能性があります。

そのようなときは、専門家に依頼して、確実に手続きをしてもらう方が安心です。

専門家への依頼費用を高いと感じたとしても、多額の借金を背負うリスクを比較すれば、必要な経費と考えられるのではないでしょうか。

弁護士や司法書士は、法律の専門家ですが、それぞれに得意分野があります。相続放棄の依頼をするときには、相続に強い弁護士、または司法書士に依頼をしてください。

相続放棄に必要な費用に関するよくある疑問

相続放棄に必要な費用に関するよくある疑問とその答えをご紹介します。

Q:相続放棄を検討していますがお金がありません。費用は高額ですか?

手続きをご自身でする場合には、3,000円ほど(必要な戸籍関係の書類で変わります)で手続きが可能です。ただし、被相続人の最後の住所地が遠いときや管理しなければならない不動産などがあるときには、別途費用がかかります。

Q:戸籍関係の書類を集める時間がありません。費用を抑えて専門家に依頼できませんか?

書類の作成代行と戸籍関係の書類を集める作業だけを依頼したいときには、司法書士に依頼をすると、弁護士に比べて費用が抑えられます。

Q:相続放棄をしてしまえばそのほかの費用はかかりませんか?

相続放棄の手続きが完了しても、「次の相続人が財産の管理をはじめるまで」被相続人の財産を管理する義務があります。特に、被相続人の財産に不動産が含まれるようなときには、その管理や現地までの交通費などの費用が必要です。また、管理を怠ったことが原因で第三者に損害を与えた場合、賠償責任もあります。

まとめ

相続放棄の手続きで必要なまとまった費用は、専門家への依頼料と財産の管理費です。財産の管理費は、土地・建物が財産に含まれるかどうかで大きく変わり、相続人の意思で費用を抑えるのはなかなか難しいでしょう。

そうなると、相続放棄にかかる費用を抑えたいときには、専門家への依頼料をということになります。相続放棄の手続きはそれほど難しくはないため、ご自身で手続きをすることが最も費用がかからない方法です。

しかし、その結果、期限内に手続きができなかったり、何らかの問題があって却下されたりするとマイナスの財産を引き継ぐことになってしまいます。費用について考えるときには、回避できるリスクや安心についても考慮して検討することをおすすめします。

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