嫁に遺産を残さない方法、残す方法

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2023年3月29日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

自分の息子の嫁と仲が良く、自分が死んだら財産を残してあげたいと思う方もいるでしょう。

逆に嫁と仲が悪く、自分の遺産を渡したくない!と思う方も・・・

この記事では、自分の子どもの配偶者に遺産を残さない方法、残す方法の両方について解説していきます。

嫁は相続人ではない

まず、一番に知っておいていただきたいのは、嫁または婿(自分の子どもの配偶者)は、子どもの親である自分が死んだときの相続人にはなりません。

以下の図で説明します。

この図の場合、父親が亡くなった場合の相続人は母親と子ども(長男)と、子ども(長女)の3人です。

(なお、母親が亡くなった場合も相続人は父親と子ども(長男)と、子ども(長女)の3人です。)

孫は、それぞれの自分の親(子ども(長男)もしくは子ども(長女))が亡くなっていたり、相続放棄した場合等に代襲相続します。

子どもの配偶者である、嫁や婿は相続人ではありません。

父親が亡くなったのち、母親が亡くなった場合、相続人は子ども(長男)と、子ども(長女)の2人です。

この場合も、孫は、それぞれの自分の親(子ども(長男)もしくは子ども(長女))が亡くなっていたり、相続放棄した場合等に代襲相続します。

代襲相続とは、簡単に言うと、相続人が亡くなったときにその人の代わりに相続財産を受け継ぐことをいいます。

代襲相続の詳細は、「代襲相続とは?相続割合や代襲相続できない場合、相続税との関係までわかりやすく解説」をご覧ください。

嫁に遺産を残さない方法

嫁は原則、相続権がない

民法では、相続人となることができるのは配偶者の他に第一順位が子供、第二順位が直系尊属(親、祖父母等)、第三順位が兄弟姉妹と規定しています。

先述のように嫁は法定相続人にはなりません。

つまり、どんなに同居して尽くしてくれた嫁であっても直接的に義父母の法定相続人になることはできないので、遺産はもらうことができません。

一般的な相続であれば嫁に遺産を残すことにはならないのです。

嫁に遺産を残す方法

ただ、同居する長男の嫁は介護などをしてくれたが、遠くに住む実子はまったく知らん顔というケースで嫁にまったく遺産を残せないのは不本意と感じる人もいるでしょう。

そのような場合に使える手段が「生前贈与」「遺贈」「養子縁組」などです。

生前贈与する

生前贈与とは、文字通り財産を持つ者が自分の生きているうちにその財産の全部または一部を無償で親族や第三者に渡すことです。

ただ、もしここに税金をかけないと相続税逃れの手段に使われてしまうことがあるため、贈与税は相続税よりも高い税率に設定されています。

具体的な贈与税の税率は贈与する財産の金額に応じて定められていますが、たとえば親子間などを除く「一般贈与」であれば、3,000万円を超える贈与では55%もの税率が設定されているのです。

このような高い贈与税を払わないように暦年贈与と相続税精算課税という課税制度を知って、自分に合う方法をつかうとよいでしょう。

毎年110万円の非課税枠がある「暦年課税制度」

暦年課税制度とは

暦年課税とは、受贈者が1月1日~12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合、110万円を超えた分に対して贈与税が課税される制度です。受贈者が相続時精算課税の申告をしなければ、暦年課税を選択したことになります。

【贈与税の課税対象となる金額の計算式】
1年間の贈与額-110万円=贈与税の課税対象となる金額
贈与税額の計算式
贈与税の課税対象となる金額×税率-控除額=贈与税額(後述の計算例参照)

【暦年課税のポイント】
暦年課税の最大のポイントは、年間110万円までなら非課税で贈与できることです。贈与額が基礎控除額の範囲内なら贈与税がかからないため、贈与があったことを申告する必要はありません。

一生涯に贈与者ごとに2,500万円まで特別控除額がある「相続時精算課税制度」

相続時精算課税は、贈与の年の1月1日時点で60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合に選択することが可能です。相続時精算課税を選択すると、その贈与者から受け取った財産の合計が2,500万円になるまで贈与税が非課税となる制度です。

ただし、 贈与された財産は、相続発生時に相続財産に加算され、相続税が課税されます。つまり、本来贈与税を課税するものを、相続税の課税対象にして、課税されるタイミングを 先送りにする制度ということです。

例えば、親の1億円の財産のうち2,500万円を相続時精算課税制度を使って子に贈与したら、贈与税はかかりませんが、親が亡くなって相続が発生したときには、残りの7,500万円の財産に贈与財産の2,500万円が加算されて、相続財産を1億円として相続税を計算します。

ただし、令和5年の税制改正では、相続時精算課税の利便性を高くし節税効果があるものに変わる見込みです。詳細は、「令和5年度税制改正の生前贈与加算と相続時精算課税・暦年贈与の節税方法を解説」記事を参照してください。

遺贈する

遺贈というのは遺言書によって財産を無償で渡すことです。これは親族に対してでも、第三者に対してでもすることができます。

遺贈については贈与税ではなく、相続に準じて相続税が課せられることになります。

遺言書の書き方の詳細は「遺言書の種類・書き方・作成方法や法的効力をわかりやすく解説【行政書士監修】」を参照してください。

養子縁組をする

嫁を養子にした場合は相続人にすることができます。養子縁組で相続人の数を増やすことにより、遺産から引くことができる基礎控除額が増えることなどから、相続税対策として知られていますが、夫の親と2世帯で住んでいて、親より先に夫が亡くなることで嫁が出ていかなくてはならない状況を防ぐというリスク対策として考える場合もあるようです。

養子についての詳細は「普通養子縁組と特別養子縁組での相続の違いや、養子による相続税対策を解説」で詳しく説明しています。

嫁に財産を残す場合の注意点

上記のように生前贈与、遺贈いずれの手段であっても法定相続人ではない嫁に財産を渡すことはできます。

嫁に財産を残す理由が実の子どもたちと関係が悪かったということで遺言書の内容を「全財産を嫁の〇〇に遺贈する」などとしてしまった場合、子どもたちが「遺留分」を主張して嫁と争いになることが予想されます。

遺留分とは、被相続人の配偶者、子、直系尊属に認められている権利で、相続財産の一定割合を法により保証されているものです。つまり、生前贈与や遺贈をする際には他の相続人の遺留分確保を十分に考えた上で行う必要があります。

遺留分については「遺留分とは?計算や請求方法など完全解説」を参照してください。

まとめ

以上、嫁や婿などの子どもの配偶者は相続においては法定相続人にはならないということ、遺産を残すにはいくつかの方法があることを説明してきました。

事前に遺言書を書いて対策したいと検討されている方は、相続に強い専門家に相談しましょう。

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