【令和6年4月1日から施行】相続登記の義務化が決定!違反の場合は過料も

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本記事の内容は、原則、記事執筆日(2021年3月9日)時点の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家等にご確認ください。なお、万が一記事により損害が生じた場合、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

所有者不明土地問題に関する改正不動産登記法などの関連法案が2021年4月21日、参院本会議で可決し成立しました。これにより相続登記の義務化が決定しました。

相続登記とは「相続した不動産を相続人の名義に変更すること」を言いますが、今までも登記という仕組みがあったのに、なぜ「義務化」がされるのでしょうか?

また、怠ってしまった場合はどうなるのでしょうか?

この記事では相続登記の義務化について、その概要や怠ったときのペナルティについて解説します

【令和6年4月1日から施行】相続登記の義務化が決定!違反の場合は過料も

所有者不明土地問題に関する改正不動産登記法などの関連法案が2021年4月21日、参院本会議で可決し成立しました。これにより相続登記の義務化が決定しました。

相続登記とは「相続した不動産を相続人の名義に変更すること」を言いますが、今までも登記という仕組みがあったのに、なぜ「義務化」がされるのでしょうか?

また、怠ってしまった場合はどうなるのでしょうか?

この記事では相続登記の義務化について、その概要や怠ったときのペナルティについて解説します

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この記事はこんな方におすすめ:
「今後不動産を相続する人、可能性のある人」「相続登記の義務化で何が変わるのか知りたい方」

  • 所有者不明土地問題の顕在化、空き家問題などの深刻化により制定
  • 施行後は不動産を相続したら登記は義務に。放置してしまうと過料が科される
  • 義務化に伴い手続きが簡素化。相続人申請登記など新制度も開始

相続登記とは

建物を相続したときや贈与されたときに行う登記を相続登記と言います。実際には、所有権移転登記のひとつです。

所有権移転登記とは

所有権移転登記は、「不動産登記」と言われる手続きの種類であり、土地や建物の所有権が移ったことを明確にするため、法務局が管理する公の帳簿(登記簿)に反映させる手続きです。

不動産を売買したときや、贈与されたとき、相続したときに、所有権移転登記を行います。

不動産の所有権が移動したとき、登記簿に反映させておかないと、第三者から権利を主張されるなどのトラブルになる可能性があります。

不動産登記とは

不動産登記とは、不動産の情報を公に明らかにするために、その不動産の所在や面積、所有者などを法務局で記録・管理する手続きです。不動産の購入や売却を安全に行うためには、法務局で記録することが大切になってきます。

登記の記録は「登記簿」もしくは「登記記録」と呼ばれ、誰でも手数料を払うことで日本全国の不動産の登記事項証明書を取得することができます。

なぜ、相続登記が義務化されるの?

相続登記に義務化

今までは、不動産の相続や所有者の住所変更時などの登記には期限がなく、義務も罰則もありませんでした。

そのため所有者がはっきりとしない土地(相続登記の放置)、所有者の名前は分かっても所在が不明の土地(住所変更未登記)などが増え、 実際に東日本大震災の災害復旧の遅れの一因にもなっています。

このように、災害対策ができない、放置された土地への不法投棄、空き家問題などが顕在化し、防災上の問題や、周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼしている原因の一つであるとして指摘されており、法整備が急がれていました。

国土交通省の平成28年度地積調査では、不動産登記簿上で所有者の所在が確認できない土地の割合は全体の約20%。そのうちの約66%が、相続時の所有権移転の未登記でした。ほかにも、平成30年住宅・土地統計調査(総務省)では、1988年から2018年までの20年間で、空き家の総数は1.5倍の846万戸へ増加していることが分かっています。

このような背景から、相続登記(不動産登記)が義務化されることになりました。

国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」から引用

なぜ登記をしていない人がいたの?

相続登記されてない建物は多くありますが、相続した人は登記をしなかったのでしょうか?これには、いくつかの理由が考えられます。

  • 何代も前から登記していなかったので、だれが登記すべきかわからない
  • 遺産分割が難航して登記できない状況
  • 登記することを知らなかった、方法が分からなかった……など

相続手続きの側面で見ると、現金などに比べ、不動産は専門性が高く難解なため、敬遠されがちなことも登記がされなかった理由の一つかもしれません。

相続登記を怠ると、過料が科されることも

相続登記の義務化が決定されたことにより、一定の期間内に手続きをしなかった場合など、以下の過料が科されることになりました。

相続等により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象となります。

また義務化自体は令和6年4月1日から施行ですが、過去の相続についても適用されます。

相続登記の義務化に関係する、相続の制度改正など

相続登記の義務化の他に、いくつか制度の新設や改正があります。

住所変更登記の義務化

住所変更登記とは、登記簿上の住所を現在の住所に変更することです。住宅を購入した場合や引っ越した場合は、住所変更登記が必要になります。この住所変更登記の義務化が決定されました。

個人が行う住所変更登記の他に、会社などの法人が行う住所変更登記登記上の所有者の住所・氏名・名称変更についても義務化の対象になります。

所有する名義人の氏名、住所などの変更があった日から2年以内に正当な理由がないのにその申請を怠ったとき、5万円以下の過料の対象になります。

また、相続登記と同じく、法改正以前の住所等の変更未登記物件にも適用されます。住所変更登記の義務化は、令和8年4月までに施行される予定です。

特別受益と寄与分については10年以内に遺産分割を終えなければならない

相続登記の義務化に関連して、遺産分割の期限制限が設けられます。

民法上は、遺産分割には期限がありませんが、遺産分割されないまま長期間経ってしまうとさらに相続が発生してしまい、権利関係が複雑になる問題がありました。

さらに特別受益や寄与分の問題が生じると、相続分の算定がより複雑になります。そこで、特別受益と寄与分が主張できるのは、相続開始から10年までという決まりができました。

そのため改正後には、相続開始から10年を過ぎた特別受益と寄与分は主張できなくなり、原則法定相続分での分割となります(ただし、相続開始から10年以内に家庭裁判所に遺産の分割の請求などをしている場合を除く)。

この法改正は「公布の日(※令和3年4月28日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とあるので、令和5年4月までに始まることになります。

相続人申告登記(仮称)の新設

相続の内容によっては、遺産分割がなかなかまとまらず期限までに相続登記ができないこともありえます。そういった場合に、登記上の所有者が亡くなったこと、自らが相続人であることを申告すれば、10万円以下の過料を一時的に免れることができるようになります。

これを相続人申告登記(仮称)と言います。相続人申告登記をすると、法務局が登記簿に申告者の氏名住所などを記録します。

相続人申告登記は相続登記ではなく、あくまで仮の報告のようなものです。そのため、遺産分割がまとまったら、その確定した日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

この相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科されます。相続人申告登記で一時的に免れたのに、その後失念して過料を受けることがないようにしましょう。

相続人申告登記は、令和6年4月1日から施行されます。

相続土地国庫帰属法の創設

田舎の土地や管理できない空き地など、土地を手放したいと考える人が増えています。しかし、土地の所有権を放棄することは実務上できない状態です。

そのまま所有者不明の土地となってしまうのを防ぐため、一定の要件の元、土地所有権の放棄を可能とする制度が創設されます。これが相続土地国庫帰属法で、令和5年4月27日から施行されます。

しかし放棄できるのは土地の所有権を相続した相続人に限り、生前から所有している土地を放棄することはできません。

また、この他に、放棄には法務大臣の承認申請が必要など要件が多く、実際に放棄するには高いハードルがあります。

登記手続きの一部簡略化

遺贈する旨の遺言書があったとき、不動産の遺贈を受ける者以外に法定相続人全員(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の協力がないと遺贈による名義変更手続きができませんでした。

しかし改正後は、遺贈(相続人に対する遺贈に限る)による名義変更は、不動産の贈与を受ける人が単独で申請することができるようになりました。

また、遺産分割による名義変更登記も、法改正により不動産を取得した人が単独で申請できるようになりました。

外国に居住する所有権の登記名義人の国内連絡先の登記

海外の相続人

近年、海外投資家による不動産投資の増加などにより、不動産の所有者が国内に住所をもたないケースが増加しつつあります。

そういった所有者は連絡を取ることが難しい場合が多いという問題点があります。

そのため、所有権の登記名義人に国内の住所がないときは、国内における連絡先となる人の氏名や住所、連絡先に関する事項を登記事項にする、外国に住所がある外国人などが国内の不動産の名義人の場合の住所証明情報を見直しするなどの仕組みが設けられました。

外国に居住する所有権の登記名義人の国内連絡先の登記については、令和6年4月1日から施行されます。

よくある質問

相続登記の義務化について、よくある質問をまとめました。

相続登記はいつから義務化されますか?

令和6年4月1日から相続登記の義務化が施行されます(改正法の施行)。また、施行日前に相続の開始があった場合についても適用されます。

相続登記が義務化されると、どうなりますか?

相続登記の義務化が施行されると、土地所有者の相続人は取得を知ってから3年以内に相続登記が必要となります。

相続登記を怠ると、罰金はありますか?

正当な理由なく相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科される場合があります。

まとめ

この改正により、空き家の活用やまちづくりの支援、災害対策以外にも住宅流通市場の活性化も期待できるでしょう。

相続登記の義務化により、不動産を所有する人には厳しい側面もありますが、登記を促すため、今回の改正には、遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化や登記簿の附属書類の閲覧制度の見直し、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する制度なども盛り込まれています。

施行にはまだ時間はありますので、この機会にご自身の財産目録を作成したり、これから実際に相続の手続きをする方は、しっかりと遺産分割協議書を作って相続を円満に解決する対策を講じるなど、ご検討されてはいかがでしょうか。

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